こんにちは、社労士の小野です。梅雨が近いです。先日長く経営トップの高齢の経営者と面談しました。ここまでこれた要因は何でしょうかと聞きました。「経営者はみんな努力していると思う、人は人生誰でも2回チャンスがある。その機会を逃さないこと、その時は大変な試練だが、そこを乗り越えると大きな発展が待っている。経営も同じだよ。」なかなか含蓄のあるお話でした。イラン情勢で大変ですが、皆様にお役に立つ情報を提供できれば幸いです。
令和8年5月
目次
1. 小野事務所通信
2. ストレスチェック制度の対象拡大(法改正)
3. 厚生労働省・労務管理トピックス
4. 小野事務所の取り組み(フロンティア人事評価制度)
5. PSRネットワーク 弁護士 坂本正幸先生コラム
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1.小野事務所通信
被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」といいます)の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定されていましたが、令和8年4月からは、「労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入」により判定すること
とされました(他の収入がある場合を除きます)。その留意点を、今一度確認しておきましょう。https://drive.google.com/file/d/1wYEFF9aEJxUbOqG4xtXp7pwCGbclwxUk/view?usp=sharing
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2.ストレスチェック制度の対象拡大(法改正)
労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた常時50人未満の事業場についても、ストレスチェックの実施が義務化される予定です。企業は年1回以上のストレスチェックを実施し、結果を本人へ通知するとともに、高ストレス者から申出があった場合は医師による面接指導を実施しなければなりません。また、集団分析等を活用し、職場環境の改善に取り組むことも重要です。中小企業においてもメンタルヘルス対策の体制整備が求められます。なお、施行期日は公布日(令和7年5月14日)から3年以内の政令で定める日とされています。【改正のポイント】
・50人未満事業場にも実施義務を拡大
・メンタルヘルス不調の予防を強化
・高ストレス者への医師面接制度は継続
・職場環境改善への活用を推進
【実務アドバイス】
今後は中小企業でもストレスチェック体制の整備が必要となります。実施方法、委託先選定、結果の集団分析、人事労務施策への反映が重要です。
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3.厚生労働省・労務管理トピックス
・育児・介護と仕事の両立支援の強化
少子高齢化が進む中、育児や介護を理由とした離職を防ぐため、企業には仕事と家庭の両立を支援する取組みが求められています。令和7年・8年の育児・介護休業法改正では、育児休業や介護休業の取得促進に加え、子の看護休暇の拡充、介護離職防止のための個別周知・意向確認、柔軟な働き方の推進などが強化されました。事業主は制度の周知や相談体制の整備を行い、従業員が安心して働き続けられる職場環境を整備することが求められます。
・人材確保・定着対策の推進
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、厚生労働省は人材確保と定着を重要課題として位置付けています。賃上げの推進、職場環境の改善、多様な働き方の導入、リスキリング(学び直し)支援、女性・高齢者・育児介護を担う人材の活躍促進などを進めています。また、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金などの活用により、従業員の能力向上と職場定着を支援しています。企業には「採用」だけでなく、「育成」と「定着」を見据えた人事労務管理が求められています。
社労士としてのワンポイントアドバイス
人材確保が難しい時代だからこそ、「採用→育成→評価→処遇」の仕組みづくりが重要です。特に人事評価制度の整備は、従業員の成長実感や公平感を高め、定着率向上につながります。小野事務所では「フロンティア人事評価制度」により、人材育成と定着支援に取り組んでいます。
・ハラスメント防止体制の整備
令和8年10月から、企業にカスタマーハラスメント対策が義務付けられます。事業主は方針の明確化、相談窓口の設置、被害者への配慮、再発防止措置などを講じ、従業員が安心して働ける職場環境を整備する必要があります。
社労士からのアドバイス ~カスタマーハラスメント対策義務化に向けて~
令和8年10月からカスタマーハラスメント対策が事業主の義務となります。カスハラは従業員の精神的負担を増大させ、休職や離職の原因となるだけでなく、企業の人材確保や定着にも大きな影響を及ぼします。
企業は、単に相談窓口を設置するだけでなく、「どのような行為をカスハラとするのか」を明確にし、対応手順をマニュアル化しておくことが重要です。また、管理職や従業員への研修を実施し、組織として適切に対応できる体制を整備しておく必要があります。
特に中小企業では、顧客との関係を重視するあまり従業員が我慢を強いられるケースも見受けられます。しかし、従業員を守ることは事業主の重要な責務です。今後は就業規則への規定整備、相談窓口の設置、対応マニュアルの作成など、早めの準備を進めることをお勧めします。
小野事務所では、カスハラ対策規程の作成、相談窓口体制の整備、管理職研修の実施を支援しております。お気軽にご相談ください。
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4.小野事務所の取り組み
【フロンティア人事評価制度 webアプリ開発状況】
小野事務所では中小企業向けクラウド型人事評価システム「フロンティア人事評価制度」を開発中です。 Webアプリで、運用が回り出します」
主な特徴
・コンピテンシー評価と業績評価の両立
・社員自身による自己評価入力
・管理職による評価・フィードバック機能
・評価結果と賃金制度の連携
・中小企業でも導入しやすいシンプル設計
・Webアプリで、生成AIを活用した評価基準作成、評価コメントの作成、スマートホンからも自己評価入力、報連相機能。管理者からの一斉通知、ワーク指示等ができます。中小企業でも導入しやすいシンプル設計
顧問先企業への先行導入を予定しており、人材定着と人材育成を支援する仕組みとして提供予定です。
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5.PSRネットワーク 弁護士 坂本正幸先生コラム
復職要件を欠く労働者による賃金請求が棄却された事例
東京地方裁判所令和7年8月6日判決
事案の概要
被告会社はIT関連事業を業とする企業である。原告が休職中に復職を申し出たが9か月間復職させなかったことから、民法536条2項に基づく賃金支払い義務があるとして、賃金支払を求めて訴えを提起した。
原告は平成21年9月1日に被告に採用された。その後脳梗塞に罹患し左半身麻痺になるなどし、その後令和2年6月1日に左足手術のため入院し、7月30日に退院した。有休を消化し、また傷病欠勤が規定日数に達したため、会社は休職命令を発した。
原告は医師による復職可能とした診断書を令和2年12月7日に会社に提出したが、会社は復職を認めず、令和3年9月14日に復職を認めた。原告は復職日の午前中出社したが、午後からは継続して在宅勤務をしている。
判旨
休職事由の消滅が認められるには、原告が原告と被告との労働契約における債務の本旨に従った履行の提供ができる状態になる必要があり、原則として、従前の職務を通常程度に行える健康状態になるか、当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行える健康状態になることが必要である。また、労働者が復職や労働内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が従前にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供の申出をしているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である、と最高裁平成10年4月9日判決を引用し、本件では原告は債務の本旨に従った労務の提供はできなかったとして請求を棄却した。
解説
本件は労働者に問題があった事例でもある。労使関係で訴訟にまでなるケースは使用者と労働者のいずれかまたは双方に何らかの問題があることが多い。近時は労働者側に問題があるのではと思われる事案が目立つようになった。
これは、今までは労働者に問題がある事案は法律相談の時点で難しいと弁護士が受任しない、または、交渉のみ(労働者の満足いく結果が出なくてもよい)という依頼を受けるケースが多かったからとも考えられる。法律相談が一定のスクリーニング機能を持っていたといえよう。
会社の経営者たちと接するときには、労働者がもともと問題を起こしている者であるかの聞き取りは、訴訟で初めて依頼を受ける弁護士よりは、日常的に業務に関連している社会保険労務士の方が容易にできるのではないか、と思われるので、この点に注意して日常業務にあたるとよい。
また、本件では、在宅勤務の要件を原告が満たしていないという事情がある。復職日の午前中のみ出社し、その後在宅勤務をしているという主張であるが、被告会社では、在宅勤務希望者のうち、自己管理・時間管理ができる者であり、かつ、上司が認めた在宅勤務が可能な業務ができる者であることが必要であるが、この要件を原告は満たしていないと認定されている(過去に業務上のミスが多かったなどの事情がある)。
過去に在宅勤務が認められていたと原告が主張したが、これはコロナ禍において、身体に障害があることからの配慮であり、就業規則の要件を満たしたものではないと認定された。
さらに、在宅でないとした場合、自動車通勤を認めてほしいと申し出たが、被告会社が自動車関連企業であることから、事故防止のために自動車での通勤を認めておらず、これも合理性があるとした。
結局本件では、会社は就業規則を適切に適用したという認定になっている。
民法では債務の本旨に従った債務の履行が求められており、それが困難であれば対価の支払いは行われないとしており、本件もそれが適用されたものといえる。
会社の配慮が当然と考えられてしまったところにこの問題があるとも考えられる。
概要
本件は有給を消化し、傷病欠勤が規定日数に達したことから休職命令が出ていた原告が、復職を求めたが会社がそれを認めず、その後復職が認められた。原告は復職を求めた日からの給与相当の金員の支払いを求めたが、債務の本旨(契約内容)に従った労務を提供していないとして認められなかった。
執筆者
弁護士 坂本正幸
東京大学法科大学院前専任講師。特定社労士認定講師。