こんにちは、社会保険労務士小野事務所です。
小野事務所ニュースレターをご案内いたします。
ようやく、しのぎやすい気候になってきました。季節の変わり目、体調を崩さないよう注意しましょう。
主な内容は
- 小野事務所通信10月号
- 社労士認証制度で人材確保をサポート!
- 年末調整の効率化!「オフィスステーション年末調整」導入で時間と経費を大幅削減
- 労働判例 教習指導員資格取得後3年以内に退職した従業員に立替費用を返還請求したことが労働基準法16条に違反しないとされた事案
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1.小野事務所通信
・10月号
- 令和6年度の地域別最低賃金の改定状況─すべての都道府県で出揃う!
令和6年度の地域別最低賃金について、各地方最低賃金審議会での答申が出揃い、その結果が厚生労働省から公表されました。これによると、中央最低賃金審議会が示した目安額を超える改定が47都道府県中27県で答申されており、全国加重平均額も、目安額として示された1,054円を上回る「1,055円」となっています。発効年月日とともに、最寄りの地域の地域別最低賃金の額をご確認ください。
https://drive.google.com/file/d/0B2fthy759ci7a05DWk1uUWhUclE/view?usp=sharing&resourcekey=0-MtxK5-8O-_DRQTmVq6STjQ
2. 社労士認証制度で人材確保をサポート!
昨今、優秀な人材の確保がますます困難になっていると感じていませんか?この課題に対処するために、ぜひ「社労士認証制度」をご検討ください。
この認証制度は、貴社が法令遵守や働きやすい職場環境の整備に力を入れていることを証明するもので、求職者に対して大きな安心感と信頼を与えることができます。
認証のメリット:
- 人材確保の強化: 働きやすい職場環境があることが認証され、応募者に安心感を与え、優秀な人材の採用が容易になります。
- 社内のモチベーション向上: 認証取得に向けた取り組みが、社内の法令遵守や労働環境の改善につながり、従業員の定着率や生産性向上に寄与します。
ぜひこの機会に、社労士認証制度の導入を前向きにご検討ください。
下記は社会保険労務士小野事務所の社労士認証制度のサイトです。
https://www.sharoushiono.org/%E5%8A%B4%E5%8B%99%E7%AE%A1%E7%90%86-1/%E7%A4%BE%E5%8A%B4%E5%A3%AB%E8%A8%BA%E6%96%AD%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E5%88%B6%E5%BA%A6/
3. 年末調整の効率化!「オフィスステーション年末調整」導入で時間と経費を大幅削減
年末調整の業務に多くの時間や労力を割かれていませんか?「オフィスステーション年末調整」を導入することで、これらの課題を解決し、業務の効率化を実現できます。
オフィスステーション年末調整の導入メリット:
- 時間の短縮: 自動化されたワークフローで、従業員のデータ入力や確認作業がスムーズに進み、短時間で完了します。
- 経費の削減: 紙の申請書や郵送コストが不要となり、経費削減に貢献します。
- 効率化: データの一元管理により、ミスを防ぎ、スムーズな対応が可能になります。複雑な年末調整も容易に行えます。
業務負担を軽減し、年末の業務をスムーズに進めるために、ぜひ「オフィスステーション年末調整」の導入をご検討ください。
この2つの提案が、皆様の企業の成長と発展に役立つことを心より願っております。
ご不明点や詳細についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
下記はオフィスステーション年末調整サイトです
https://www.officestation.jp/nencho/
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5.判例について(PSRnetwork記載)
教習指導員資格取得後3年以内に退職した従業員に立替費用を返還請求したことが労働基準法16条に違反しないとされた事案
最高裁第三小法廷令和6年4月16日判決
事案の概要
原告は自動車教習所を運営する株式会社である。被告は令和4年4月1日に原告に採用され、教習指導員見習、指導員資格取得のために研修所で講習を受け、同年5月6日に指導員審査に合格した。その後同年5月12日から翌年1月9日まで原告に勤務していた。
原告と被告の間で、令和4年4月1日に指導員資格取得にかかる費用について、原告が被告に貸し付け立替払いをすること、3年を超えて原告に勤務したときは返還を免除することとした。被告が3年以内である翌年1月に一身上の都合で退職したため費用の返還を請求した。
判旨
裁判所は、教習指導員資格は国家資格であり、この資格があることで指定自動車教習所での指導が可能になること、原告のみならず、自動車教習所に限定されるとはいえ、指導員として仕事ができ、就職にとっても有利となるから、本来は個人で費用を負担して取得すべきものであるとした。また、研修を1か月で修了させる短期集中型であり、資格取得後は手当が出ることから収入増加が早期に実現すること、研修の間給与が支払われており、就業が免除されていたことも被告に有利であったことから、合理的な内容であり、労働基準法16条に違反しないとした。
解説
資格取得費用を会社が負担したり、援助したりするケースは多く取り入れられている。その費用について、返還する旨の合意をしているケースもある。よく知られているのは国家公務員の留学費用の返還制度である。これは留学によって「個人」に学位やスキルが獲得されること、これを有利に利用してすぐに転職されてしまったら、費用が税金で負担されていることから国民の理解を得られないということにある。
会社などが費用を負担することによって、個人が資格を取得するのであり、資格取得によって手当が支払われたり、転職が有利になるなどの利益が個人に生じる。
会社としては資格取得後の業務への貢献を見込んで補助をしたり費用負担をしているので、返還の規程を設けていることもある。
本件はその返還請求が労基法16条に反するかが争われた。
個人の費用負担でも取得可能な資格ではある。また、研修所に短期集中で通わずに1年程度の時間をかけて取得することが可能な資格でもあった。個人で資格取得してそこから指導員としての手当を取得する方法もあった。
会社の方針であったとしても、会社の費用負担によって早期に資格取得ができたことや、手当がついたことなどを考えると、被告にとって有利な状況であったことから、裁判所は労働契約の不履行による違約金や損害賠償にはあたらないとした。
なお、教習指導員資格は自動車教習所以外では使わない資格であることから、汎用性がなく、特に有利な資格を取得したといえないとの主張には、判旨でも国家資格であることや手当が付くことから妥当であるとした。会社が他の資格を選択できずこの資格のみを取得させたことは業務との関連から妥当であるとした。
費用返還請求ができる期間も3年であり、不当に長期間労働者を会社に縛り付けるようなものではないことも一つの要素である。
業務と関連する資格を取得させるときの費用負担を会社がするときはそのあとの貢献を期待してのものであり、返還請求ができるとした契約をすることには一定の合理性がある。ただ、資格取得による有利な扱いなどがない場合は裁判所の判断が変わる可能性もあるのですべての事案で返還可能とは言えない。業務との関連性や手当などの支給も考慮してのアドバイスが必要となる。
概要
自動車教習所を経営する会社が新入社員の教習指導員資格取得費用を立て替え、その後1年経過しないうちに退職した場合に、費用返還請求をしたケースで、手当などの支給もあったことから返還請求は労基法16条に違反しないとした。
執筆者
弁護士坂本正幸
東京大学法科大学院前専任講師。特定社労士認定講師。