こんにちは、社会保険労務士小野事務所です。
小野事務所ニュースレターをご案内いたします。
事務所前のスーパーの入口の天井と壁の境にツバメが巣を作りヒナに餌を運び始めました。ここには例年6個ぐらい巣を作ります。スーパーも注意喚起の張り紙をしています。自然が身近にあるのは素晴らしいと思います。
主な内容は
- 小野事務所通信5月号、6月号
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を活用しよう!厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を活用しよう!
- 「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」により、高年齢雇用継続給付の最大給付率が15%から「10%」に引き下げられ、高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の併給調整に係る調整率も、最大で標準報酬月額の6%から「4%」に相当する額に引き下げられます障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。(令和6年4月以降)
- .判例について 勤務地限定契約の成否(学校法人A学園事件)
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1.小野事務所通信
5・6月号をご案内いたします。
- 令和6年度がスタート 厚生労働省関係の主な制度変更をチェックしておきましょう
- 障害者の法定雇用率の引き上げ【主な対象者:事業主、障害者】
時間外労働の上限規制【主な対象者:旧適用猶予事業・業務に従事する労働者とその使用者】
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)の適用
労働条件明示事項の見直し【主な対象者:すべての使用者と労働者】
裁量労働制の改正【主な対象者:裁量労働制適用労働者・導入事業場】
- 「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表(経産省)
超高齢社会の日本において、生産年齢人口の減少が続く中、仕事をしながら介護に従事する、いわゆるビジネスケアラーの数は増加傾向にあり、2030年時点では約318万人、経済損失額は約9兆円にのぼると試算されています。そんな諸課題への対応として、経済産業省が、仕事と介護の両立支援に関する経営者向けのガイドラインを初めて策定しました。その狙いを確認しておきましょう。
- 令和6年分所得税の定額減税 フローチャートで確認
会社などにお勤めの方についての所得税の定額減税は、「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、ここでは「扶養控除等申告書」といいます)を提出している勤務先において行う必要があります。国税庁が給与所得者の方向けに作成したリーフレットに、定額減税の対象となるかどうかなどを確認できるフローチャートが掲載されていますので、確認しておきましょう。
- 令和6年度の労働保険の年度更新の期間は6月3日(月)~7月10日(水)
令和4年度・令和5年度の年度更新においては、令和4年度の雇用保険率が年度の途中で引き上げられたことによる影響で特殊な処理が必要でしたが、令和6年度の年度更新においては、そのような特殊な処理はありません。しかし、事業の種類によっては労災保険率が改定されている可能性もありますので、注意の上、申告書を作成する必要があります。
- 令和6年4月 源泉所得税の改正のあらまし」を公表(国税庁)
令和6年度の税制改正などにより源泉所得税関係について行われた改正のうち、主要なものを紹介する「令和6年4月 源泉所得税の改正のあらまし」が、国税庁から公表されました。定額減税の実施が最も重要といえますが、次のような改正も行われますので、早めに確認しておきましょう。
事務所通信5月号
https://drive.google.com/file/d/1wYEFF9aEJxUbOqG4xtXp7pwCGbclwxUk/view?usp=sharing
事務所通信6月号
https://drive.google.com/file/d/1MpargdJQ3oGcqN_4cfN3UvE2YQMm5Rc-/view?usp=sharing
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2. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を活用しよう!厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を活用しよう!
今年2月、厚生労働省では、睡眠に係る推奨事項や参考情報をまとめた「健康づくりのための睡眠ガ
イド2023」を公表しています。
~睡眠ガイドから~ 交替制勤務が無い職場でも役立つ情報です! 抜粋してご案内いたします。
眠りが浅い人、昼間眠くなる方 改善に役立つかもしれません。
https://drive.google.com/file/d/1N2sLGe8twLNK0dDsFJcwNmA5-xaHbh5n/view?usp=sharing
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3.「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」により
「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」により、高年齢雇用継続給付の最大給付率が15%から「10%」に引き下げられ、高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の併給調整に係る調整率も、最大で標準報酬月額の6%から「4%」に相当する額に引き下げられます。
これに伴い、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者である場合であって、高年齢雇用継続給付の支給対象月の標準報酬月額が60歳時賃金の64%以上75%未満であるときは、標準報酬月額が逓増する程度に応じて、4%から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率(=逓減率)に標準報酬月額を乗じて得た額に相当する老齢厚生年金を支給停止とすることとされますが、その厚生労働省令で定める率(=逓減率)について規定した厚生年金保険法施行規則を改正するもの。
□ 施行期日 令和7年4月1日
□ 関連資料
この改正について、厚生労働省から、その内容を周知するための通達が公表されていますので、紹介しておきます。
<厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令の公布について(通知)(令和6年3月14日年発0314第1号)>
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240322T0010.pdf
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5.判例について(PSRnetwork記載)
勤務地限定契約の成否(学校法人A学園事件)
福岡地方裁判所小倉支部令和5年9月19日判決
事案の概要
被告法人Aは、教育機関を運営する学校法人であり、中学・高校、幼稚園などを設置してきた。その後他の市で運営されていた他の学校法人を吸収合併し、存続法人は被告法人となり新法人Bは令和5年4月3日に設立された。
原告は消滅した法人に勤務していた講師である。原告は平成29年8月22日に解雇されたが、その後解雇が無効であることが確定している。被告Aは令和3年10月16日に原告に対して配転命令を行い、学校Cでの勤務を命じた。原告は労働契約は勤務地限定契約であると主張して配転命令の効力を争った。
判旨
「学校法人の合併や学校の新設などに伴い、採用時に存在しなかった新たな職場で勤務する可能性が事後的に生ずることは、一般的にあり得ることである上、被告Aの本件学校における就業規則には、業務の都合による配置転換等の異動に関する定めがあり、原告は消滅法人に対し、配置換えや勤務場所の変更があっても異議がない旨記載された誓約書を提出している。」という事実などを認定し「原告の勤務地を限定することを承諾する意思表示がなされた事実を推認するには足りない。」として主張を認めなかった。
解説
勤務地や職種を限定する契約が問題となることはままあり得る。特に本件は法人が合併したことにより勤務先となる場所が増え、その各場所への人員配置を考えた場合に当初予定しなかった場所への勤務や職種変更が起きることがある。
本件ではもともとトラブルがあった従業員との間の紛争であることが特徴的であるが、それ以外の一般論としての勤務地等の限定契約の効力を考えることができるケースである。
もともと複数の拠点を持っている企業は必ずしも多くはない。しかし、経済的な問題や経営の合理化などにより、合併等が行われることも多い。不況の中では今までの単独の企業では経営が困難となったとしての合併などもあり得る。
その場合、合併とともにリストラを行うこともあり、配置転換という形で退職を促すケースも出てくることが予想される。
本件ではもともと勤務先となる学校の数が多いわけではなかった。ただし、合併などに関して採用時に予想できなかった勤務先ができることがある。本件で裁判所は事後的に勤務先が増えることは一般的にあり得ると判示している。こういったケースでは勤務地限定契約が仮にあったとしても、必要性や合理性で勤務先の変更が認められる可能性はある。管理職が必要であるなどの状況で、適任者が他にいないなどの事情をきちんと説明できるように固めておくことが重要となる。会社によっては資格や等級などが規定されており、役職に対して必要な資格が決められているところもあり、そういったものがあれば説明もしやすくなる。また、業務の都合による配置転換がありうることが就業規則にも定められていたこと、勤務地を限定する契約と認められるような事情がなかったことが指摘されている。勤務地限定契約と明記されていなくても、採用時の事情などで限定契約を解釈されることはあるので注意は必要である(介護の必要などを話し合ったうえでの採用だと限定と解釈される可能性はある)。裁判所は一般論としての勤務先の増加の可能性と明確に勤務地を限定していなかったことを指摘して判断をしている。
なお、本件ではもともと紛争があった労働者に対する配置転換であって報復的になされたのではということから、配置転換は権利濫用であり無効としたことを付け加えておく。
概要
勤務先の学校が吸収合併されて、新たに他の校舎・学校という勤務先が増加したことなどから、配置転換で他の学校に異動を命じられた。勤務地限定契約を主張したが、合併などで勤務先が変化することはありうるとして勤務地限定契約とは認めなかった。
執筆者
弁護士坂本正幸
東京大学法科大学院前専任講師。特定社労士認定講師。